2026年度の診療報酬改定に向けて、医療分野が大きく動き始めています。
関係者によると、全体としては「プラス改定」になる見通しが強まりました。背景には物価高騰や医療機関の経営悪化、さらには政府が掲げる賃上げ方針があります。
今回は、最近公表された調査結果や政府・関係団体の動向を整理し、2026年度改定のポイントをまとめます。
■ 診療報酬とは?──「薬価」と「本体」の2本立て
診療報酬は大きく次の2つで構成されます。
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薬価(やっか):医薬品の価格。市場価格に合わせて毎年改定。
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本体部分:医師・看護師などの技術料・人件費。2年に1度改定。
前回の2024年度改定は、
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本体:+0.88%
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薬価:−1.00%
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全体:−0.12%のマイナス改定
でした。
今回の2026年度改定では、このバランスが大きく変わる見込みです。
■ 薬価は「小幅な引き下げ」にとどまる見通し
厚生労働省が12月3日に公表した調査では、医薬品の市場取引価格が薬価を平均4.8%下回ったという結果が示されました。
この「差」は前年度比で0.4ポイント縮小しており、前回改定時よりも小さくなっています。
そのため、
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薬価の引き下げ幅は前回より小幅にとどまる
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結果として全体改定へのマイナス圧力は弱まる
と見込まれています。
■ 本体部分は「前回以上の引き上げ」か
一方で、本体部分については大幅なプラス方向の調整が進んでいます。
▼ 追い風となる要因
医療機関の人件費は物価に比べて伸びにくく、現場からは「このままでは人材確保が難しい」という声が強まっています。
▼ しかし財務省は慎重
診療報酬が1%上がると医療費は年間約5,000億円増加するとされ、財務省は
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「診療所の経営は堅調」として大幅引き上げに慎重
という姿勢。
政府内での調整はまだ続いており、今月末の決定では本体部分の上げ幅が最大の焦点となりそうです。
■ 入院患者の食費も値上げへ──1食730円案が提示
同じく12月3日、厚労省は中医協にて、入院患者の食費を1食あたり690円 → 730円に引き上げる案を示しました。
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食材費高騰への対応
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値上げ分のうち患者負担割合は年末までに調整
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2026年度から実施予定
なお、近年は24年6月に30円、25年4月に20円と段階的に値上げされてきており、一般所得者の場合は追加分は患者負担となっています。
■ 2026年度改定は「本体の毎年改定」議論にも発展?
インフレ動向を踏まえ、
本体部分も薬価同様に毎年改定すべきではないか
という声が高まっています。
物価高が続く中、2年に1度では現場の実態に追いつかないとの指摘は確かに説得力があります。
今後の医療政策の重要論点となりそうです。
■ まとめ:2026年度は「医療機関支援色の強いプラス改定」に
今回の調整状況を総合すると、2026年度診療報酬改定は
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薬価:小幅なマイナス
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本体:24年度以上のプラス
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全体としてプラス改定へ
という方向性が固まりつつあります。
物価高・人件費上昇で揺れる医療現場にとって、今回の改定は大きな転機となるかもしれません。
最終的な改定率は「年内に決定」とされており、今後の政府の判断が注目されます。